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第61話「風の原野」

last update Date de publication: 2026-03-04 09:26:32
 森の民の集落から距離が離れて、罠が減ったことを確かめたセリュオスたちは、地下道から出て地上を歩くことにしていた。

 ガドル曰く、目的地に向かうためには一度地上に出なければいけないらしい。

 どうせなら、すべての地下道を繋げてくれれば良かったのにと思うセリュオスだが、地下道をすべて繋げてしまうと、もしも外敵に侵入を許した際、地を這う民の村が襲撃される可能性も高まってしまうからなのだとか。

 そして、しばらく続いた霧の森を抜けた瞬間、セリュオスは思わず足を止めた。

 その場所だけ、先ほどまでと全く異なる世界が広がっていたのだ。

 長い間立ち込めていた乳白色の霧がうそのように晴れ、頭上には雲ひとつない蒼穹そうきゅうが現れた。

 霧の森の湿った匂いは薄れ、代わりに冷たく澄んだ風が頬をでた。

「……ここは“風の原野”と呼ばれる場所です」

 シエルハの呟きに応えるように、遠くで草原が騒めいた。

 起伏の少ない広大な大地の上を、風が川のように流れていく。

「風の、原野……」

 草海が波打ち、陽光が反射し、小さなきらめきが走る。

「気持ちの
白浪まだら

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  • 時空勇者 〜過去に遡ったら宿敵の魔王と旅立つことになりました〜   第73話「魔王の幹部」

     攫われたディリダの追跡は、地を這う民の街の外縁――普段は堅く封じられているはずの通路から飛び出し、さらに奥へと続いていた。  石の扉の隙間からは、湿った外気がゆっくりと流れ込んでいた。 冷たく、重い匂い。  木々の葉と漂う霧は、地上特有の香りだった。 セリュオスは無意識に大きく息を吸い込んでいた。  胸いっぱいに広がる空気に懐かしさがよぎる。  だが、それは安堵とは違うものだった。「……外まで出ちまったなァ」  ガドルの呟きは、どこか掠れている。  外に出た喜びよりも、焦りと不安が色濃く滲んでいた。 それでも、ガドルは足を前に運ぼうとする。  確かに、立ち止まっていてはディリダの元まで辿り着くことはできない。 レバザが斧槍を振り回し、周囲に漂う霧を操りながらディリダの行方を探っている。 「ディリダを攫った痕跡は、この先に続いているみたいだね」    すると、レバザが示した道の先で、エレージアの指先が小さな欠片を拾い上げた。 「これは……鉱物みたいね」  掌の上で光る欠片を見つめ、眉を顰める。 「でも、なぜ鉱物がこんなところに落ちているんでしょうか? 辺りに山は見当たらないのに……」 シエルハの疑問にエレージアが首を横に振る。 「いいえ、自然にできたものとは限らないわ。魔物が体内で造り出したものかもしれないし」 セリュオスも一歩近づき、欠片を確認することにした。  硬質な鉱物は自然のものとは思えない輝きを秘めていた。 「確かに、これは自然にできたものとは思えない……。ここまで不純物の混じらない鉱物ができるのは稀だからな。……これは、敵が落としたものなのか?」「わからないけど、そもそも……誰がディリダを攫ったの?」  エレージアが周囲を警戒しながら口を開くと、沈黙が落ちた。  誰もが考えてはいたが、口に出すのを躊躇っていた疑問だった。「あっしにも、わからねェ。こんなことは……初めてだ」  ガドルの視線は前方から逸らしていなかった。  これまで魔物が侵入することのなかった地を這う民の街が、外部から明確な敵意を向けられることなど、ほとんどなかっただろう。  ましてや、特定の個人を狙った誘拐など、誰の仕業と考えたら良いの

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     森はどこまでも深く、頭上を覆う枝葉は陽光を遮り、昼であるはずなのに黄昏時のような薄暗さを漂わせていた。  湿った土と苔の匂い、木々の間を渡る風の音――それらすべてが同じに感じられ、セリュオスは何度歩いても同じ場所に戻って来るような錯覚に陥っていた。「……やっぱり、方向感覚くらいは鍛えておくべきだったか」  額の汗をぬぐい、苦笑混じりに吐き出す。  勇者の紋章を持っているとはいえ、冒険者としてはまだ駆け出しである。  剣の重みも旅の孤独も、まだ肌に馴染んでいなかった。 そのとき――森を裂くように獣の咆哮が響いた。  低く重く、地の底から湧き上がるような唸り。

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